急性期理学療法のリスク管理〜体液と補液〜
急性期患者は、受傷や手術などによる侵襲に対して様々な生体反応を引き起こします
もちろん患部に対するケアも重要ですが、介入初期では呼吸、循環動態に注意しながら離床を進めていく必要があります
特に循環動態は血圧や心拍・脈拍などでルーティンに評価する場合が多く、単に数値の増減や高低を考えがちです
我々が歩行を評価して、問題点をリーズニングしていくのと同様に、循環動態の数値に対しても"なぜ"の視点にからリーズニングしていく必要があります
今回は体液管理の視点から、急性期理学療法のリスク管理を考えていきます
●体液の組成
体液は細胞内液と細胞外液に2:1の割合で分けれらます
さらに細胞外液は組織間液と循環血液に3:1で分けられます
(細胞内液:組織間液:循環血液=8:3:1)
細胞内にはKイオンが、細胞外液は主にNaイオンが多く、組織間液を挟んで、電解質バランスを保っています
そのため「脱水したので点滴で補液する」だけでは不十分であり、体液分布のどこに対する点滴なのかが重要です
●輸液療法
急性期の輸液療法では主に循環血液量の増加を目的とした場合が多いです
ただし上述にように体液の組成は決まっているため、循環血液量を増やすにはイオン濃度を考慮した輸液が必要です
輸液先はもちろん血管を含めた細胞外液です
電解質のバランスは、イオンの薄い方から濃い方へ水分が流れます
色(イオン)が濃い水と薄い水が混ざると徐々に濃薄さはなくなるのと同じイメージで良いと思います
ナメクジに塩をかけるとしぼむとされていますが、これはナメクジ(細胞)の身体の外(細胞外)の塩(Na)濃度が濃くなることでナメクジ内の水分が移動するために起きる現象です
そのため生理食塩液のようなNa濃度が高い輸液は、 ナメクジと同様の状態が身体でおき、細胞外液のNa濃度を均整しようと細胞内液から細胞外へ水分が移動します
すなわち細胞外液だけが脱水し、水分、Naともに喪失している場合に、Na濃度が高い補液がされることになります
具体的には、けがや手術などによる出血、下痢や嘔吐など急激な体液喪失の際に上記のような現象や補液が行われます
対して高齢者で多い熱中症や脱水と呼ばれる状態は、徐々に体液を喪失していきます
そのため細胞内液も減少しているため、細胞内外のどちらにも補液を行う必要があります
そのため電解質濃度が循環血液よりも薄いものを投与します
そうすると循環血液の電解質濃度がは薄まり、相対的に細胞内液は濃度が高い状態となります
薄い方から濃い方へ水分が流れていきますから、細胞内液にも水分が補給されます
この補液には1号液から4号液まで、用途に合わせて4種類あり、特徴が分かれています
下記の大塚製薬のサイトがわかりやすいため参考にしてください
私のブログよりわかりやすいです笑
次は侵襲により体液はどのような変化をするのか、その次はその変化とバイタルサインについてまとめていきます