半側空間無視のリハビリテーション ③
前回までは古典的な半側空間無視の病態理解に、半球間不均衡説と方向性注意障害説があることを説明しました
今回は2つの注意システムとUSNの関係について考えていきます
corbettaら,2008より引用
この写真の左側は意識的にパソコンの画面に集中した状態です
このような注意を能動的注意やトップダウン注意などと呼びます
人物の脳部分は活動量に応じた色分けがなされており、オレンジ色の部分、つまり脳の上部(背側)が働いています
そのためこの能動的注意に関わる神経ネットワークを背側注意ネットワークと呼んでいます
対して右側の写真では、奥の人がこちらを向いており、それに対してこちらもパソコン→奥の人に注意を切り替えた状態です
このような、たくさんの情報の中から際立った感覚情報に注意を再定位する働きを受動的注意やボトムアップ注意と呼んでいます
人物の脳部分は先程の背側注意ネットワークに加えて脳の下部(腹側)が働いています
そのため受動的注意に関わる神経ネットワークを腹側注意ネットワークと呼んでいます
森岡,2017 PTジャーナル10月号の特集より引用
この図は先程の背側/腹側注意ネットワークの関係図になっています
白抜き四角が背側注意ネットワークですが、両側半球に存在し、半球間抑制されています
グレーの四角が腹側注意ネットワークですが、こちらは右半球に側性化しています
そのため右半球半球損傷にて腹側注意ネットワークがダメージを負うと、腹側注意ネットワークの機能低下します
さらに神経連絡がある同側の背側注意ネットワークの機能低下が生じ、半球間抑制の観点から左半球の背側注意ネットワークが過度に働き、右側を注視します
このメカニズムは半球間不均衡説と方向性注意障害説のどちらの要素も満たした考え方です
そのためUSNの病巣として腹側注意ネットワークに関わる部位が注目されています
次回はこのメカニズムを踏まえて今まで私たちが行ってきた治療について考えていきたいと思います