理学療法士の文献整理棚

リハビリ関係のアウトプット

末期癌の患者の癌(がん)性疼痛に対してリハビリテーション職種ができること

脳卒中はシリーズで書く予定ですが、合間に単発で文献のまとめを記入したいと思います

 

今回は癌性疼痛です

 

日本人の死因第1位である悪性新生物、いわゆる"癌(がん)"は、急性期病院で働く理学療法士にとってもよく出会う疾患の1つです

 

私の病院には血液内科があり、よくリハ処方があるため血液の癌に接する機会が多いです

 

その他にも他の疾患で入院したが、既往歴の末期癌に関する症状が主訴、なんて場合があります

 

どこの癌なのかよって症状は多彩です

その中でもリハビリテーションの制限となり、かつ介入対象になりうるのが癌性疼痛だと考えます

 

そもそも癌性疼痛とは、腫瘍細胞の浸潤により組織が損傷されることで生じる苦痛や不快感を指します

 

大森らによると40年間の論文のシステマティックレビューで、癌患者の53%が疼痛を保有しているという報告があると示している

1)大森まいこ;がんのリハビリテーションに必要な知識〜疼痛の問題〜.Journal of clinical rehabilitation.Vol25,No11,2016.

 

 疼痛治療には基本である薬物療法と補助的な非薬物療法があります

 

リハビリテーションは非薬物療法に位置付けられ、その中にマッサージやTENSや温熱、寒冷療法といった物理療法、疼痛を自制できるような患者教育が含まれます

 

 リハ医学会が作成したがんのリハビリテーションガイドラインによると

 

 末期癌患者の疼痛、倦怠感に対してマッサージ、TENSは推奨グレードB(行うよう勧められている)となっています

注意点として局所の腫瘍に対するマッサージは禁忌のため注意が必要です

特にマッサージに関しては末期癌患者だけでなく、広く癌患者を対象とした研究が多いものの研究の質が低く、一定の結論に至っていないといわれています

 

また看護師による疼痛緩和教育も推奨グレードBとなっています

この患者教育は疼痛管理や薬剤管理のこと指しており、我々が行うような動作の指導については含まれていません

 

 

 

また末期癌患者の多くは他臓器や組織に転移をしている場合が多いです

我々リハビリテーション職種が関わる転移としては骨転移が最も多いのではないでしょうか

 

真鍋によると肺がん、乳がん前立腺がんに骨転移の頻度が高いと報告しています

2)真鍋淳;骨転移.医薬ジャーナル,2014.

 

また安部によると癌患者のリハビリテーションでは無自覚の骨転移に対する予防的配慮が重要であり、痛みの訴えが血液検査や画像診断よりも鋭敏な指標になるとしている

そのためリハビリテーション中に痛みをモニタリングしておくことが重要でであるとしています

 

3)安部能成;骨転移のリハビリテーション.腫瘍内科,340ー345,2016.

 

また骨転移の存在に気づけなければ、骨痛、病的骨折へと発展していきます

ただし癌患者における病的骨折の頻度は1/96とそれほど多くないようです

 

 

癌患者の緩和ケアの考え方に"WHO方式がん疼痛治療法"というものがあります

疼痛治療の目標として

第1の目標;痛みに妨げられない夜間の睡眠

第2の目標;安静時の痛みの消失

第3の目標;体動時の痛みの消失

と基本においています

 

第1、2の目標は薬物療法が中心ですが、第3の目標に関してはリハビリテーション職種からの動作指導が目標達成の一助になる可能性があります

 

骨転移がある場合の動作指導の原則は、骨にストレスを与えないことです

骨へのストレス回避の方法として以下が重要です

・回旋やねじれの動きを最小限にすること

・ゆっくりとした動き出しで初動に疼痛を出現させない

・杖や歩行器など体重の分散を考慮

・方向転換は回旋軽減を考慮して小刻みにステップ

・他動より自動での運動を

 

骨転移は止めることができません

またイメージとして骨折と聞くと荷重ストレスや転倒などの受傷機転を考えますが、病的骨折の場合は必ずしも荷重や外傷的に生じるわけではありません

 

 

 

癌患者に対して理学療法士ができることは少ないかもしれません

また個体差が大きく病気のため対応の仕方も紹介した方法の一辺倒ではないと思っています

しかし原則をしった上で介入していくことは大切と考えます