理学療法士の文献整理棚

リハビリ関係のアウトプット

急性期理学療法のリスク管理〜侵襲後の生体反応〜

前回は体液の組成と補液について簡単に確認しました

 

kaxmo.hatenablog.com

 

急性期病院のリハビリテーションにおいて体液変化、補液を考慮する場合で最も多いは侵襲後だと思います

 

内部疾患患者の廃用症候群に対するリハビリテーションでも必要知識と思いますが、今回は主に侵襲後について考えていきます

 

●侵襲時の免疫反応

生体に侵襲された時、様々な免疫反応が起こります

 

血管透過性を上昇させ、免疫に関わる白血球などの物質が細胞内外に移動しやすくします

 

免疫物質が侵襲部の細胞を攻撃することで生体を守ろうとしています

 

血管透過性が亢進すること毛細血管の血流量が増加するため発赤が生じます(冷え性の逆のイメージでしょうか)

 

血流が増加し、透過性が高いため組織間液に浸出し、腫脹が生じます

 

また白血球などが発熱物質を産生するため、熱感が生じます(白血球も動いていますので、エネルギーを使いますし、そうしたら発熱もしそうですね)

 

これに痛み物質(プロスタグランジンやキニン)といった化学物質により疼痛、加えて運動制限を認めます

 

合わせて炎症の主徴候として学校でも必ず習うことかと思います

 

 

サードスペース

体液からみて重要なことは

侵襲により血管透過性が亢進し、循環血液から血液が浸出する

ということです

 

先ほどは組織間液に循環血液が浸出するとしましたが、そのどちらでもないサードスペース(第3のスペース)に一時的に浸出液が貯留します

 

これらは浮腫として観察され、広義には腹水や胸水も含まれます

 

そのためサードスペースに浸出した分、循環血液量を維持するため、補液が開始されます(in バランスとなります)

 

また循環血液量を維持するため抗利尿作用が働き、尿量は減少します(さらにinバランスとなります)

 

●利尿期

侵襲後約48ー72時間ほどすると炎症症状が改善に向かいます

 

この時期はサードスペースに貯留していた組織液が、循環血液内に戻ってきます

 

つまり循環血液量が増加し、尿量が増加します

 

この時期を利尿期といい、利尿がないと心肺は水浸し状態となり、心不全や肺水腫のリスクとなります

 

当院では整形外科の術後患者は術後翌日より離床し、早めに尿バルーンを外すことが通例となっています

 

術後に比して術後3日目に脈拍数が高く、よくよくみると利尿が進んでいなかった、なんとことが時折あります

 

それほど大事に至らないケースが多いですが、リスク管理としては必要知識かと考えます

 

 

次回はこういった生体反応が実際どのようにバイタルサインに反映するのかを考えていきます