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リハビリ関係のアウトプット

急性期理学療法のリスク管理〜バイタルサイン②〜

前回は侵襲後のバイタルサインのお話の前に、介入するタイミングが大切だというお話をしました

 

今回はいよいよ、具体的なバイタルサインの変化についてお話を進めていきます

 

ここでは馴染みのある血圧と心拍数または脈拍に焦点を当てていきます

 

 

ここに3例のバイタルサインを提示します

 

①血圧90/50mmHg 心拍数60bpm

②血圧90/50mmHg 心拍数100bpm

③血圧120/60mmHg 心拍数100-130bpmで変動あり 脈拍70-80bpm

 

術後初回介入の場合、この数値をどう解釈していけば良いのでしょうか?

 

①血圧、心拍数ともに低め

血圧は循環血液量と血管抵抗で決定されます

術後に血圧が低下するということは出血に伴う循環血液喪失が原因に考えられます

本来ならば代償的に心拍数を上げて血流を維持しますが、本例は低めです

循環の代償が不十分な状態で離床すると重力により血流が下肢に溜まり、循環血流の低下を招きます

そのためさらなる血圧低下とめまいや意識低下など脳血流減少症状を招く可能性があります

 

②は血圧低下に対する心拍数の増大による代償がなされており、循環動態としては①より安心です

脳血流減少症状も可能性として低くなります

 

③は不整脈が出ている場合です

重篤な不整脈でない限りは離床を制限されることはありません

血圧が安定し、脈拍が70-80bpmであれば息こらえや急な体位変換さえしなければ、比較的安全に離床できると考えられます

 

 

体液の喪失に対して最も敏感なバイタルサインは、心拍数と言われています

血圧は術後の補液で改善されやすく、また侵襲の刺激や痛みにより交感神経優位となり、高値となりやすいです

また血圧は病前からの個体値の差があり、指標にしづらいことがあります

 

以上より、血圧と心拍数から体液状態を予測しながら介入することが大切です

 

またサードスペースから循環血液に戻る術後48-72時間では利尿が進みますが、この期間に利尿が進んでいないと心不全や肺水腫など呼吸循環動態に影響します

 

利尿期は体液が増えますから心拍数も高いことが多いです

 

運動療法の妨げになる程度ではないですが、量の調整は必要かなと思います

 

実際は術後の炎症が強い時期ですから自ずと負荷をかけられない状況です

 

こういった見方で運動器だけでなく呼吸循環の視点からリスク管理することが可能となります