理学療法士の文献整理棚

リハビリ関係のアウトプット

ワーラー変性とリハビリテーションへの応用

今回はワーラー変性についてです

 

 

 

●ワーラー変性とは

 

基本的な内容ですが、確認です

神経線維に損傷が生じた場合、損傷部より遠位部には神経伝達や栄養が滞ります

その結果、損傷部より遠位部の神経線維の軸索が萎縮していく変化をワーラー変性といいます

使用されていない神経路が徐々に萎縮・不活性していくイメージでしょうか

 

皮質脊髄路に生じるワーラー変性に関する報告

原は、右中大脳動脈領域の心原性脳塞栓症患者の急性期MRI/DWI画像と発症から2週のMRI/DWI画像を比較した

病巣は放線冠~基底核にかけてであるが、2週後の画像では損傷側の中脳大脳脚に高信号領域を認めた自験例を紹介している

 

1)原寛美;超急性期から開始する脳卒中リハビリテーションの理論と実践.Medical Rehabilitation,2013. 

 

Matsusueは、2例のケースレポートにて脳塞栓症を発症から24日後、3ケ月後、24か月後のMRI画像にてワーラー変性描出について検討している

2)Mastusue E,et al : Wallerian degeneration of the corticospinal tracts : postmortem MR-pathologic correlations. Acta Radiol 48 : 690-694,2007.

 

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A.B.C;T2での病変

D;左中脳の大脳脚に高信号域

F;中脳拡大図および矢印が高信号領域

文献2)より引用

 

●ワーラー変性を考慮して、急性期リハビリテーションを考える

 

これらの報告を読む前は、漠然と神経路にも廃用があるんだろうな、程度のイメージでした

発症一か月以内にワーラー変性が生じていることを知ることで急性期リハビリテーションでのプログラムを考える必要があると考えます

現状ではこのワーラー変性を阻止する方略に関する知見はないのが現状です

しかし神経損傷部以遠の萎縮ということを考えると、如何に早期に損傷した神経路に興奮性の刺激を入力するかが、ポイントになると考えられます

 

しかし闇雲に刺激をいれるだけでは、代償的に他の運動関連領域の興奮性が増大し、半球間抑制に拍車がかかり、皮質脊髄路の回復は遅れ、痙縮の一因となりえます

それだけ繊細なプログラムが求められています

ただし細かな機能を追求したプログラムでは意識障害や注意障害がある場合に適応できず、また局所的な脳部位へのオーバーフローを引き起こす可能性があります

 

つまり"こうすれば良くなる"という答えはありません

常に考え続けなければならないですが、そこが醍醐味と思っています

 

次回は、海外での早期離床による予後・転帰への影響を記した報告(AVERTⅢ)についてまとめていきます