理学療法士の文献整理棚

リハビリ関係のアウトプット

AVERTⅢの反響

前回AVERTⅢのの概要について示しました

 

kaxmo.hatenablog.com

 


これを受けて脳卒中ガイドラインや日本のリハビリテーション医の先生方の反応をご紹介します


日本脳卒中学会から出されている脳卒中ガイドラインは2015年に改訂されています

そこで急性期の脳卒中リハビリテーションについて以下のように言及しています

 

廃用症候群を予防し、早期のADL向上と社会復帰を図るために、十分なリスク管理のもとにできるだけ発症後早期から積極的なリハビリテーションを行うことが強く勧められる(グレードA)。その内容には、早期座位・立位、装具を用 いた早期歩行訓練、摂食・嚥下訓練、セルフケア訓練などが含まれる。
脳卒中ユニット、脳卒中リハビリテーションユニットなどの組織化された場で、リハビリテーションチームによる集中的なリハビリテーションを行い、早期の退院に向けた積極的な指導を行うことが強く勧められる(グレードA)。

としています

 

しかしAVERTⅢが発表されたのが2015年です

2015年版のガイドラインには盛り込まれていません

そのため次回の改訂にどう響くのか気になっていましたが、2017年に追補版が発表されました

http://www.jsts.gr.jp/img/guideline2015_tuiho2017.pdf

 

そこでAVERTⅢについても言及されています

超早期(24時間以内)からの積極的介入(座位、立位などのアプ ローチを頻回に、かつ訓練量を多く実施)の効果を明らかにする大規模多施設研究の結果、3か月後の予後良好 (modified Rankin Scale 0~2)例の比率が通常のアプローチを実施した対照群で有意に高いという結果が報告された

 

また以下のようにも記されています

脳卒中の機能、能力的回復と最適な離床のタイミング、訓練量および頻度の関連性については未だ議論のあるところである。


さらに和誌、総合リハビリテーションでは"急性期脳卒中リハビリテーションup-to-date"という特集を2017年2月号に載せています

 

そこで藤井らはAVERTⅢの解釈について以下のように述べています

・早期離床群と通常群で離床時間の差が4時間しかないため早期介入自体を問うには慎重を期す必要がある

 

 

・順序尺度であるmRSを用いているが、スコア2(屋外を含めて自立)ではなくスコア3(屋内は自立も屋外は監視や介助を要する)を境界とすると有意差はなくなることからBIやFIMのような詳細な評価が必要

→以下私見

これに関しては発症3ヶ月という回復途中の段階で予後を決定するのはどうかなと思います

高次脳機能障害などを考慮すると1年後でのoutcomeも気になりますね

 

 

脳卒中発症からリハビリテーション開始までの時間だけを考慮するのではなく、超急性期リハビリテーションの適切な介入の頻度や量について検討する必要がある

 

・AVERTⅢの結果はやみくもな離床に対する警鐘ととらえるべきであり、患者個々の病態をを把握した徹底的なリスク管理が重要

 

この雑誌では他の切り口でもAVERTを解説していて面白いので是非御一読を

 

ここまで勢いがあった早期離床ですが、どこか離床を速めればそれでいいような風潮になっているように思います

根拠をもって離床することは、早期離床のエビデンスを盾に強引に離床することではありません(私個人としてはそういう離床をみると暴力的だなと感じてしまいます)

病態を解釈とリスク管理をいかに科学的に根拠を持ち、離床する選択、しない選択をできるかということだと考えます