理学療法士の文献整理棚

リハビリ関係のアウトプット

AVERTⅢのその後

 

●はじめに

 

AVERTⅢについて概説しました

 

kaxmo.hatenablog.com

 

 

またAVERTⅢに対する医師やガイドラインでの反応についてまとめました

 

kaxmo.hatenablog.com

 

 

今回は2016年6月に雑誌NeuologyにAVERTをの研究グループによって掲載された論文を紹介します

現時点ではAVERTの分析に関しては評論以外の内容では唯一の論文ではないかと思います

 

Presoecified dose-response analysis for A Very Early Rehabilitation Trial(AVERT),Neuology,2016.

上記pubmedGoogle Scholarで検索すればフリーアクセスできます

 

●本論文の要点

 

この論文ではAVERTⅢのデータを、以下の量的パラメーターから解析しています

1.発症後の最初の離床までの時間

2.1日の離床セッションの回数

3.1日の離床時間の量/入院中の離床時間の総量 

 

今回は看護師の離床は含まず、PTによる離床セッションのみを測定対象としています

また椅子座位は離床セッションには含まれていません

 

上記の量的パラメーターに加えて年齢、NIHSSによる重症度といった複数の変数を組み合わせて、"早期離床"と"予後"の関係を考察しています

 

●結果

今回は"決定木分析"という樹木状のモデルによる要因を分析しています 

f:id:kaxmo:20171123221529p:plain

上記文献より一部改変して引用

 

 青帯の良好な結果が多い要因としては、重症度が低く、年齢が若いという当然の結果に加えて、頻度が多く、短時間であることが重要なことがわかります

 

また1回以上の離床セッション頻度は、outcomeであったmRSと介助なし50m歩行の獲得のオッズを増やし、5分以上の離床はそれらを減らす結果でした

 

さらに1回以上の離床セッション頻度は、死亡率のオッズを減らす結果となりました

 

●結果よりまとめ

これらの結果より以下のような考察が記されています

◆年齢、重症度、1日の離床セッションの頻度と量が同じならば、最初の離床までの時間を早くした方が良好な転帰となる

◆離床セッションの頻度を増やすことは、能力低下、死亡率を減少させ、3か月後の転帰を良好にする

◆NIHSSによる重症度が最も寄与し、セッションの頻度、年齢、最初の離床までの時間、1日のセッション量の順で続く

◆最初の離床までの時間と1日のセッション量が同じ条件ならば、離床セッションの増加は良好な転帰につながり、対して最初の離床までの時間と1日のセッション頻度が同じ条件ならば離床時間の増加は良好な転帰を減少させる

 

●結語

 

筆者は最後に以下のようにまとめています

①PTやNsの離床介入は長期的なoutcomeを変化させうる

②本研究結果では介入の頻度の重要性を示唆した(低用量、高頻度)

脳卒中発症後、初日では「more practice is always better」の考え方を再考する必要がある 

 

また頻度のみならず、適切な開始時間や量に関しても引き続き研究が必要としています

この研究結果の数値的な部分を鵜呑みにするのは誤解釈だと思います

しかし私たちが疑いもなく行っていた「より早く、より多く、より長く」という超早期、高頻度、高用量の脳卒中リハビリテーションについて、科学的な追及が必要になっています