日本神経理学療法学会参加型フォーラム(2017,11/4・5)に参加して
11月4日、5日と東京の首都大学東京荒川キャンパスで行われた日本神経理学療法学会の参加型フォーラムに参加してきました
フォーラムのテーマは"現状と未来の道標"
大会長は本学会長の千里リハの吉尾先生です
このフォーラムは参加型と銘打ち、参加者を含めたSIG(Special Interest Group)を形成し、神経理学療法が直面している問題に対してディスカッションするという新しい企画が催されました
このディスカッションが神経理学療法の"現状と未来の道標"を形作り、今後進むべき方向を共有していこうという意図でした
その中で吉尾先生は
学問の根幹を成す用語の定義(共同運動を例にして)が曖昧であるところに科学的な発展はない
理学療法士が病態や現象の普遍的言語化を怠ってきたため、脳障害の理学療法は目覚しい発展ができていない
とおっしゃっていました
それが神経理学療法の現在地点の総論的なものであり、SIGにより各論的な内容を討論する形が採用されたのかなと思いました
また現在、理学療法ガイドラインの改訂中であり、脳卒中部門の担当者たちもお話しされていました
理学療法士はガイドラインを使えないどころか、ガイドラインがどういうものか知らない
こういう切り口から学会で提言されるのは、私は初めて見ました
私の職場に理学療法ガイドラインを適切に理解、使用しているスタッフは何人いるのでしょうか…
私も知ったかぶりだったと反省している1人です
このガイドラインが、理学療法の普遍性を担保するものに発展していくことが大切であり、そのためには自分たちで知見を挙げていくしかない
そう思いました
またシンポジウムの中では福岡国際医療福祉大の玉利先生からMRIについてのお話が印象的でした
近年拡散テンソルトラクトグラフィーにより神経路を可視化できるようになってきています
理学療法士分野では、韓国からの報告で皮質脊髄路や皮質網様体脊髄路を綺麗に可視化したものが論文に載りました
元々皮質網様体脊髄路は姿勢制御の観点から注目されてきていました
しかし皮質脊髄路ほど明確な経路を示した文献や書籍は出回っておらず、ましてMRIでどのスライスにどのように…なんてところは診る人によってまちまちのような感じでした
そんな中、先ほどの韓国からの論文には以下のように綺麗に示されました
(Sung Ho Jang,2013.)
(その他、pubmedでcorticoreticular pathwayと検索すれば何本か、freeのものがみれると思います)
これを引用して他の症例の画像評価に役立てた人は私を含めたくさんいたと思います
あれだけ限局して、明確に示されればそうなります、至極自然です
しかし玉利先生はあれだけ綺麗に抽出するのは難しい、よっぽどのチャンピオンデータだとお話しされていました
(妥当性が乏しいというのが本音な印象でしたが、チャンピオンデータという大人な発言をされていたように捉えましたが笑)
SIGの中でも先生は画像は病態解釈の一助であって、それで動作能力を期待できないし、画像だけで物を言うのは危険だという趣旨のお話をしていました
機器についてや解析について知識がないが、発展したら理学療法士に役立つ分野なため、出てきた報告を疑わず丸呑みしてしまう危険性をはらんでいると知ることができました
間違った解釈や良いところだけをフォーカスしたセラピストが、また別のセラピストにミスリードする可能性があります
すでにミスリードは進んでいるのかもしれません、もちろん私を含めて
この2日で得たものを消化しつつ、自分の病院に還元できるように働きかけていきたいと思います
"硬いからマッサージ"は効果があるのか
病院で働いていると理学療法士の仕事=マッサージの人というイメージを持たれています
それは患者さんだけでなく医療者側からもです
実際、整形外科術後など徒手療法を行う場面も多くあります
私もその1人ですが、周りのスタッフよりマッサージを選択する場面は少ないです
私はアンチ徒手療法でもアンチマッサージでもありません
私の病院では365日リハを実施しているので、代行することが多くあります
他のスタッフの代行メニューを見ると時折
"痛い=マッサージ"、"硬い=マッサージ"という発想でのメニューが組まれています
そういった患者さんはマッサージに依存的な場合が多く、腰も痛いから揉んでくれ、反対側もやってくれ、など要求が増していく傾向にあります
私は急性期病院に勤務しているので自然経過や廃用の改善により介入の内容に関係なく、ある程度は機能、能力が向上します
そのためマッサージが治療効果に反映されているかどうかはわからないです
良くなってるんだからいいじゃん
という発想もあるかもしれませんね
ただ最速最大の効果を突き詰めることが、専門職としての責務であると思います
そう考えると〇〇だからマッサージの発想は最善策ではないと思います
患者さんが痛がっている、筋肉が硬くなっている
マッサージをする
患者さんが気持ち良かったと満足している
セラピストはそれを見て満足する
しかし対症療法的なので痛みは残る
痛いのはマッサージの程度が低いからだとなる
もっと強い刺激、量をもとめる
その要求に答えてセラピストがマッサージする
その他のプログラムでは満足できず
こんなような負のスパイラルが完成する
一度こうなると担当セラピストが考えを修正しない限り変わりません
しかしこのスパイラルでは患者さんからの依存だけでなく、セラピストも患者さんのニーズに応えてるため共依存の状態になります
共依存から抜け出すのは大変です
特に急性期病院では自然経過で良くなる方が多いため、共依存状態にあることを気付けない場合が多いです
本当にそれが最善なのか?
これを常に考え続けることが重要です
自戒を込めて
ワーラー変性とリハビリテーションへの応用
今回はワーラー変性についてです
●ワーラー変性とは
基本的な内容ですが、確認です
神経線維に損傷が生じた場合、損傷部より遠位部には神経伝達や栄養が滞ります
その結果、損傷部より遠位部の神経線維の軸索が萎縮していく変化をワーラー変性といいます
使用されていない神経路が徐々に萎縮・不活性していくイメージでしょうか
●皮質脊髄路に生じるワーラー変性に関する報告
原は、右中大脳動脈領域の心原性脳塞栓症患者の急性期MRI/DWI画像と発症から2週のMRI/DWI画像を比較した
病巣は放線冠~基底核にかけてであるが、2週後の画像では損傷側の中脳大脳脚に高信号領域を認めた自験例を紹介している
1)原寛美;超急性期から開始する脳卒中リハビリテーションの理論と実践.Medical Rehabilitation,2013.
Matsusueは、2例のケースレポートにて脳塞栓症を発症から24日後、3ケ月後、24か月後のMRI画像にてワーラー変性描出について検討している
2)Mastusue E,et al : Wallerian degeneration of the corticospinal tracts : postmortem MR-pathologic correlations. Acta Radiol 48 : 690-694,2007.
A.B.C;T2での病変
D;左中脳の大脳脚に高信号域
F;中脳拡大図および矢印が高信号領域
文献2)より引用
●ワーラー変性を考慮して、急性期リハビリテーションを考える
これらの報告を読む前は、漠然と神経路にも廃用があるんだろうな、程度のイメージでした
発症一か月以内にワーラー変性が生じていることを知ることで急性期リハビリテーションでのプログラムを考える必要があると考えます
現状ではこのワーラー変性を阻止する方略に関する知見はないのが現状です
しかし神経損傷部以遠の萎縮ということを考えると、如何に早期に損傷した神経路に興奮性の刺激を入力するかが、ポイントになると考えられます
しかし闇雲に刺激をいれるだけでは、代償的に他の運動関連領域の興奮性が増大し、半球間抑制に拍車がかかり、皮質脊髄路の回復は遅れ、痙縮の一因となりえます
それだけ繊細なプログラムが求められています
ただし細かな機能を追求したプログラムでは意識障害や注意障害がある場合に適応できず、また局所的な脳部位へのオーバーフローを引き起こす可能性があります
つまり"こうすれば良くなる"という答えはありません
常に考え続けなければならないですが、そこが醍醐味と思っています
次回は、海外での早期離床による予後・転帰への影響を記した報告(AVERTⅢ)についてまとめていきます
脳卒中後の痙縮について
今回は痙縮です
1.痙縮について
1-1.痙縮とは
1-2.ステージ理論と痙縮の関連
1-3.痙縮の責任病巣
1-4.痙縮のメカニズムから理学療法への応用
1.痙縮について
1-1.痙縮とは
痙縮とは、上位運動ニューロンの障害により運動速度依存性の伸張反射の亢進を呈し、腱反射の亢進を伴う運動障害とされています
痙縮の病態生理には
・筋紡錘の感受性増大によるα運動ニューロンの過剰な興奮性
・Ia線維のシナプス前抑制の減少
・相反抑制の低下
などの上位ニューロンの要素が複雑に関与しています
1-2.ステージ理論と痙縮の関連
以前の記事で脳卒中後の運動麻痺回復におけるステージ理論について紹介しました
その中で1st stageでは残存した皮質脊髄路の回復、2nd stageでは皮質間ネットワークの構築と時期により異なる回復モデルが示されました
2nd stageでは健側の運動関連領域の興奮性が高まり、徐々に減少していくとされていますが、なぜこのような現象が起こるのでしょうか
それには皮質脊髄路のもう1つのルートである"延髄で交叉せず同側に下降する神経線維すなわち前皮質脊髄路(約15%)"が関与しているとされています
この15%の前皮質脊髄路が、運動前野の過剰興奮により顕在化(いわゆるアンマスキング)するとしている
君浦隆ノ介;脳卒中後痙縮のボツリヌス治療と理学療法;脳卒中理学療法理論と技術,改訂第2版.運動機能検査,p458–470,2013.
*マスクされていた(覆い隠されていた)経路が顕在化→アンマスキング
運動麻痺回復のために今まで隠されていた神経路を顕在化したものの、かえってそれが半球間抑制を強め、損傷側の皮質脊髄路の回復を阻害してしまうのです
*半球間抑制とは、大脳半球は互いに抑制しあっている関係のこと
一側が損傷してしまうと非損傷側の大脳半球から損傷側への大脳半球への抑制性の入力が強まり、結果的に損傷側の大脳半球の働きを弱め、半球間での活動性・興奮性に偏りが出てしまう
1-3.痙縮の責任病巣
先行研究から痙縮の責任病巣と思われる部位が報告されています
動物実験において、一次運動野、延髄錐体路、外側皮質脊髄路をそれぞれ単独損傷しても痙縮は生じなかったが、運動前野や補足運動野の損傷が加わると痙縮が生じるとされています
またボトックス投与後4週間後に健側の一次運動野、両側の前運動皮質、補足運動野の活動低下がみられたとしています
ヒトの上肢での大脳皮質における痙縮の責任病巣は運動前野、補足運動野、健側の一次運動野の過剰興奮が半球間抑制の異常を起こすことにあると考えられます
1-4.痙縮のメカニズムから理学療法への応用
運動前野は小脳と連絡し、フィードバック、フィードフォワード機構や視覚優位の運動制御に関与します
補足運動野は大脳基底核と連絡し、姿勢制御や筋緊張の調整を行い、動作開始前の準備いわゆる構えの姿勢を作るとされています
痙縮の一因を運動前野、補足運動野の過剰興奮とするならば
・フィードバック、フィードフォワード機構が破綻した状態のまま動作を行うことが、運動前野の過剰興奮につながる
・視覚優位の運動制御が過度な場合、運動前野の過剰努力につながる
・姿勢や筋緊張の調整が不十分の状態で動作をすることは、補足運動野の過剰興奮につながる
と考えられます
一言でまとめるならば
"動作に対して予測、準備を作ることが重要であり、それは視覚のみに頼り過ぎるのも良くない"
でしょうか
急性期から回復期ににかけてこれらを複合的に考察していくことで痙縮予防の一助となると考えます
末期癌の患者の癌(がん)性疼痛に対してリハビリテーション職種ができること
脳卒中はシリーズで書く予定ですが、合間に単発で文献のまとめを記入したいと思います
今回は癌性疼痛です
日本人の死因第1位である悪性新生物、いわゆる"癌(がん)"は、急性期病院で働く理学療法士にとってもよく出会う疾患の1つです
私の病院には血液内科があり、よくリハ処方があるため血液の癌に接する機会が多いです
その他にも他の疾患で入院したが、既往歴の末期癌に関する症状が主訴、なんて場合があります
どこの癌なのかよって症状は多彩です
その中でもリハビリテーションの制限となり、かつ介入対象になりうるのが癌性疼痛だと考えます
そもそも癌性疼痛とは、腫瘍細胞の浸潤により組織が損傷されることで生じる苦痛や不快感を指します
大森らによると40年間の論文のシステマティックレビューで、癌患者の53%が疼痛を保有しているという報告があると示している
1)大森まいこ;がんのリハビリテーションに必要な知識〜疼痛の問題〜.Journal of clinical rehabilitation.Vol25,No11,2016.
疼痛治療には基本である薬物療法と補助的な非薬物療法があります
リハビリテーションは非薬物療法に位置付けられ、その中にマッサージやTENSや温熱、寒冷療法といった物理療法、疼痛を自制できるような患者教育が含まれます
リハ医学会が作成したがんのリハビリテーションガイドラインによると
末期癌患者の疼痛、倦怠感に対してマッサージ、TENSは推奨グレードB(行うよう勧められている)となっています
注意点として局所の腫瘍に対するマッサージは禁忌のため注意が必要です
特にマッサージに関しては末期癌患者だけでなく、広く癌患者を対象とした研究が多いものの研究の質が低く、一定の結論に至っていないといわれています
また看護師による疼痛緩和教育も推奨グレードBとなっています
この患者教育は疼痛管理や薬剤管理のこと指しており、我々が行うような動作の指導については含まれていません
また末期癌患者の多くは他臓器や組織に転移をしている場合が多いです
我々リハビリテーション職種が関わる転移としては骨転移が最も多いのではないでしょうか
真鍋によると肺がん、乳がん、前立腺がんに骨転移の頻度が高いと報告しています
2)真鍋淳;骨転移.医薬ジャーナル,2014.
また安部によると癌患者のリハビリテーションでは無自覚の骨転移に対する予防的配慮が重要であり、痛みの訴えが血液検査や画像診断よりも鋭敏な指標になるとしている
そのためリハビリテーション中に痛みをモニタリングしておくことが重要でであるとしています
また骨転移の存在に気づけなければ、骨痛、病的骨折へと発展していきます
ただし癌患者における病的骨折の頻度は1/96とそれほど多くないようです
癌患者の緩和ケアの考え方に"WHO方式がん疼痛治療法"というものがあります
疼痛治療の目標として
第1の目標;痛みに妨げられない夜間の睡眠
第2の目標;安静時の痛みの消失
第3の目標;体動時の痛みの消失
と基本においています
第1、2の目標は薬物療法が中心ですが、第3の目標に関してはリハビリテーション職種からの動作指導が目標達成の一助になる可能性があります
骨転移がある場合の動作指導の原則は、骨にストレスを与えないことです
骨へのストレス回避の方法として以下が重要です
・回旋やねじれの動きを最小限にすること
・ゆっくりとした動き出しで初動に疼痛を出現させない
・杖や歩行器など体重の分散を考慮
・方向転換は回旋軽減を考慮して小刻みにステップ
・他動より自動での運動を
骨転移は止めることができません
またイメージとして骨折と聞くと荷重ストレスや転倒などの受傷機転を考えますが、病的骨折の場合は必ずしも荷重や外傷的に生じるわけではありません
癌患者に対して理学療法士ができることは少ないかもしれません
また個体差が大きく病気のため対応の仕方も紹介した方法の一辺倒ではないと思っています
しかし原則をしった上で介入していくことは大切と考えます
脳卒中リハビリテーションの回復戦略
今では一般的となりましたが、内科疾患の患者さん、外科手術後の患者さんに関わらず急性期病院では早期離床、早期リハビリテーションの重要性が様々なところでいわれています
中でも脳卒中後のリハビリテーションの早期化は進んでおり、発症から48時間以内の介入が一般的となっています
しかし、脳卒中後の早期離床の有用性や予後変化を調べる大規模な無作為化試験では早期離床にnegativeな結果が出たと話題になりました
リハビリテーションの早期化の流れ警鐘をならす報告ですが、賛否が分かれているようです
そこで今回は脳卒中リハビリテーションにおいても早期離床、リハビリテーションの早期化について複数回にわたり考察していきたいと思います
1.脳卒中後のリハビリテーションの枠組み
脳卒中の早期リハビリテーションを知る上で重要となる知見を紹介していきます。
1)原寛美編,medical rehabilitation.No161,脳卒中超早期リハビリテーション戦略.2013,9.
1-1.critical time windowの理論
動物の虚血モデルでは発症から1ヶ月後に遅延介入した例において患側大脳半球の手指の運動野支配領域の萎縮は阻止できないことが明らかとされています
脳梗塞発症から2-3週間以内が、運動野を含めた随意運動出力系の可塑的再組織化が引き出せる期間とされています
そのため発症から2-3週以内が随意運動向上に重要な時間的枠組み(=critical time window)が、重要とされています
1-2.運動麻痺回復ステージ理論
"運動麻痺の回復は6ヶ月かけて回復し、それ以降は回復しない"
私が学生の頃は当たり前の知識として考えられていました
脳卒中リハの算定上限が180日ということも影響しているのかもしれません
"発症から1ヶ月がグンと回復して、2-3ヶ月はなだらかな回復、3-6ヶ月はわずかな回復"
これもなんとなく学生内の常識としてあったように記憶しています
これは急性期、亜急性期、回復期の区分けに影響されているのかもしれません
そんな中、紹介する運動麻痺回復ステージ理論は発症から6ヶ月間の脳内の回復戦略を知ることができます
それを元に脳内回復状況を予測しながら、適切なリハビリテーションを選択できると思います
このステージ理論は3つのステージに別れます(文字色と線色が対応)
1st stage
残存する皮質脊髄路を促進する時期
急性期から急激に減衰し、3ヶ月まで
2nd stage
皮質間のネットワークの興奮性が高まる時期
3ヶ月をピークに6ヶ月まで
3nd stage
シナプス伝導が効率化される時期
文献1)より一部改変
1st stageは脳出血後の血腫の吸収や脳浮腫の軽減、ペナンブラ領域の回復などの時期といえます
つまりより病巣部分、ダメージを負った神経路にアプローチしていくことが重要です
しかしながら脳卒中後は運動麻痺だけでなく、意識障害や注意障害など全般的に脳機能が低下していることがあります
この時に重箱の隅をつつくようなアプローチは効果を示さないばかりか、損傷部への血流のオーバーフローを要求してしまうため逆効果と考えます
2nd stageは皮質間のネットワークが構築される時期です
すなわち1st stageのような損傷部の直接的な回復ではなく、他の皮質(時には反対側大脳皮質)からのネットワーク形成です
動かなくなった麻痺肢を動かすために、脳内では複数の運動関連領域に興奮性の増加が認められます(例;左麻痺なら左の補足運動野や運動前野など)
麻痺と同側の小脳や頭頂葉など感覚領域も興奮性が増大するとされています
損傷部が回復していけば、これらの代償的な興奮性の増大は減少・消失していくとされています
一方適切に回復しなければ代償的な興奮性が増大したまま維持期に入ることなります
左麻痺を例にすると、麻痺肢を動かす際に左大脳皮質領域を興奮させます
本来、左半球の運動関連領域は右半身を動かすわけですから、右半身(非麻痺側)を動かす際も左半球の運動関連領域に興奮性が増大します
つまり
非麻痺側を動かすと、意図がなくとも麻痺側も動いてしまう
という状態、すなわち痙縮につながると考えられます
非麻痺側上下肢を利用して、手すりを引っ張りながら起立すると麻痺側上肢は強力に屈曲する、ウェルニッケ・マン肢位が増強するといった現象が起こると考えられます
1st stageから2nd stageにかけては
①難しすぎる課題による代償的かつ過剰な大脳皮質の興奮性の増加
②非麻痺側の使用を強化(麻痺側の不使用の学習)
に陥らないよう精巧なプログラムが求められます
3rd stageでは1st,2nd stageで学習された脳内ネットワーク・システムがより効率化されていく時期です
私見ですが効率化とは
神経伝導速度が上昇すなわち動きの速度の向上
動員される運動単位の増加すなわち動きの強さの増強
と考えます
特に動きの速さの向上の究極は反射とするならば、反射的に動けるすなわち自動化された動きへと移行されると考えられます
それがたとえ悪い運動パターンであったとしても
このステージ理論は急性期・回復期・生活期の分類と重なります
3つの時期に分類することで専門性の向上が図れる利点があります
しかし、裏を返せば他の時期についてはよく知らない、各時期のセラピストが線ではなく点での介入になる可能性があります
特に急性期では早期離床の名のもとに、非麻痺側を過剰に使用した立位や歩行練習や麻痺肢運動に対して脳内に過剰努力を強いる運動療法などが行われるケースがあります
もちろん意識していても非麻痺側の過剰努力が生じてしまう場面や痙縮が出現してしまうことあります(私が未熟ゆえでしょうが)
急性期から良好な経過を辿る症例も2次的な阻害因子に悩まされる症例も、どちらにおいても運動麻痺回復の流れを考慮していくことで、適切なプログラム選択の助けになると考えます
次は痙縮やワーラー変性などについて考えていきます
自分に合ったアウトプットの方法を考える
初投稿のため、ブログを書くに至った経緯をお話します
【自己紹介】
kaxmoは何者か
はじめまして、私は理学療法士をしているkaxmoです
臨床経験5年目以上10年目以下の若手の理学療法士(Physical Therapisit;PT)です
急性期の総合病院で勤務しており、来年度から大学院にて臨床研究を学び、二足の草鞋を履く予定です
PTとして数年働くと様々な知識が身につくわけですが、私の場合はそのほとんどが論文や専門書、専門雑誌から学んでいます
~3年目まではそういった紙媒体からの情報を臨床に活かせるほどの基礎知識・経験がないため勉強会に足繁く通い、3年目以降から基礎が固まったためか前述のスタイルに落ち着きました
ただ紙媒体では書類・本が溜まっていく一方で1.2回読んでファイリングし、そのままホコリを被っている・・・なんてことが頻発します
だんだんと"文献を収集し、ファイリングすること=知識となる"という悪しき習慣になっていき、昇華できていない状態になるわけです
アウトプットすること
では、自分の脳内に昇華するするには、臨床に活かせるものにしていくには、どうすればよいのでしょうか
私は"アウトプット"をすることだと思います
当然アウトプットの重要性は老若男女問わず既知のもので、もはや常識的ですが、いざ実行しようと思うと気力も体力も精神力も必要な大変な作業です
PTの世界でアウトプットというと学会発表や論文投稿、書籍の執筆といった比較的オフィシャルなものから、院内や特定のグループでの発表・勉強会といった敷居の低いものまで様々です
SNSの発達もあり、このようなブログやFacebook、twitterなどインターネットを使用して不特定な誰かに向けて発信する形も増えています
私個人としてはアウトプットの利点として
・インプット⇔アウトプットの流れが成立して初めて学習が完成する
・発表するとどこか達成感が生まれ、次の学びへとモチベーションを維持できる
・アウトプットの準備段階で新たな疑問が生まれ、より包括的な知識へつながる
・外部の人とつながりができ、自分の視野を広げることができる
・財産、実績につながる
このようにたくさん利点があります
【アウトプットの方法】
アウトプットの重要性についてお話ししましたが、やたらにやればいいというものでもありません
アウトプットにも目的にとするゴールに合わせて手法を選択することが重要と考えます
学会、論文などオフィシャルな形
私は今後大学院に進学するため学会や論文はマストになりますし、オフィシャルな発表の場では発表に関する基礎知識や先行研究の下調べ必須となりますし、なにより時間をかけて研究・探究した内容は必ず身につきます(異論はあるかもしれまんせんが、あくまで私見です)
さらに研究プロセスを知ることで、他の論文や発表を見聞きする際に批判的に吟味することができ、研究結果の良いところだけに対して盲目的にならないという利点もあります
しかし、こういった研究でアウトプットできる内容は発表できる内容に限るため、自分が好きでいろんな紙媒体から学び、まとめたものを発表するというわけにはいきません
そのため学会発表は自由度の少ない限定的な学びに対して効果的なアウトプットと言えます
学会に出まくっている人が以外に臨床がおざなり・・・なんてこともあります
しかし臨床を理論的に突き詰めた結果に生まれた疑問に関する研究やその突き詰めた臨床の振り返りとしてのケーススタディをしている人もたくさんいます
そういう人に出会い、新たな視点やモチベーションが生まれるのも学会特有メリットと考えます
院内勉強会といった職場内でのアウトプット
学会に比べるとかなり敷居低いかもしれません(勤務先の規模や熱量によりますが)
学会に比してアウトプット内容の自由度は高いですが、それでもある程度の縛りがある場合が多いのではないでしょうか
私の勤めている病院も勉強会がありますが、不定期開催から定例行事として変わったばかりということもあり、スタッフも受動的で発表者の確保に頭を悩ましています
また発表しても質問が出ない、または限られた人のみということもあり、時間をかけて準備して発表するメリットが少ない状況です(そういった職場は比較的多いのではないでしょうか)
気を付けたいのが、熱量をもって勉強会で発表したものの周囲の反応は薄く、不完全燃焼で終わることです
また発表する相手のレベルによっても内容を気にしなくてはいけません
お分かりのとおり
職場内でのアウトプットは学会発表などに比して自由度は高いが、自分知っていることをてんこ盛りにして話すというわけにもいかない
というしがらみがあります
知っているもの同士の勉強会ですから、相手の行動を変えられるような内容、発表方法やスライドデザインなどプレゼンテーション要素が強まります
しかし職場内でのアウトプットには
インプット→アウトプットによる学習促進
プレゼンテーションスキルに関する経験と学び
同僚・上司からの評価の向上
といったバランスの良い経験が得られるため有用と考えます(私も自身の職場内でがんばりたい)
ブログなどインターネット媒体でのアウトプット
理学療法士ブロガーなる言葉が徐々に広まりつつあります
非常に有意義な内容から、一般教養のようなことを書いているPTもいます
副業的な要素を含むためか、内容やスタイルは非常に多岐にわたっているなという印象です
ブログの利点はオフィシャルな発表ほど負担がなく、職場内でのアウトプットほどしがらみがなく、自由であること
だと思います
もちろん非常に作りこまれたPTのブログ記事を見ると勉強になりますし、気軽な形で作成できるものではないと思いますが・・・
さらにブログにはアウトプットしたとき(ブログにアップしたとき)の達成感もあるとありますし、インターネット上でほかのセラピストとつながることもできるかもしれません
【結局何をしたいかというと・・・】
今回私はブログを利用して
持て余している紙媒体からもう一度学び、ブログにアウトプットすることで学びを深めよう
と考えています
ブログにまとめた紙媒体は捨てるという方法で知識と家の棚の整理を同時に進められるといいのですが・・・